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愛宕山雨情
<作詞作曲編曲 TACIAO>

トンネルを抜けて 喧騒が消えて
いにしえの音に誘われて
息を弾ませ階段を蹴る 雨の愛宕山
新緑が香る博物館前 時の佇みに何想う
初めてあなたに声をかけた 雨の愛宕山
高鳴ってゆく 胸の鼓動が
瞬きの向こうへ心飛ばす
世界が変わった

ただの優しさとわかってはいても
少年の日のときめきのよう
涼し気な眼差しの行方を
追いかけられぬまま

きっとこの雨が 生まれた所に
あなたの心はあるのです
明日さえ見えぬ都会にポツリ
浮かぶ愛宕山

溢れ出そうな 想いを飲みほして
「もう少しだけ」とただ願った
世界よ止まれ

泡沫の夢は 無情にも覚めて
霧に煙る東京タワー
美しい黒髪をなびかせ 空へ帰るあなた
まだ色褪せない 最後の花弁
いにしえの風にさらわれて
陽だまりの中思い出すのは
雨の愛宕山 雨の愛宕山
雨の愛宕山 雨の愛宕山



~TACIAOメモ~

あの時雨が降っていた。あそこに彼女が立っていた。生まれて初めて感じたような瑞々しいときめきが確かにあった。
彼女と肩を並べた短すぎるひと時が、僕にとっての世界の始まりであり終わりだった。永遠への懇願が、ほんのひと時世界を止めた。今でも目を閉じて想いにふけると、目蓋の裏にあの憧憬が映し出される。再び動き始めた世界の片隅から見送った、世界の真ん中に歩を進める彼女の後ろ姿。振り向きざまに見たエレベーター前の彼女の横顔、微笑。静かな胸の高鳴りと共に、あの急な階段を踏みしめた感触がまたよみがえってくる。
あれから十数年・・・、美しい黒髪をなびかせながら、彼女は本当に空へと帰ったのだろうか?